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| 23 | 夢回帰線時代6 | パワー |
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第2回公演の「銀色の箱」は、最低でも役者が4人必要だった。しかし、旗揚メンバーで出演可能なのは、僕と渡瀬貴春だけ。しかも彼女は、高校を卒業したばかりで、役者としても前回脇役で二言三言しゃべるだけだった。役者が足りない。当てもなく、芝居仲間に声を掛けた。男女2人、協力者が現れた。
旗揚げで照明を手伝ってくれた劇団一家団乱を主宰する星野君と、妹の香代子だった。香代子は夢の遊眠社のオフを利用し、稽古日のたびに東京から通ってくれた。演出は、前回役者で参加した高校教諭のHさんにお願いした。
家族が病気のかおりちゃんも、衣装係を買ってでてくれた。
芯から芝居好きの役者4人による、濃密な稽古バトルが始まった。台本の行間を、香代子がアドリブの演技で埋めた。香代子に負けじと星野君が追った。僕は選曲や装置を考案しながら、主役をはった。渡瀬も必死でついてきた。
たった5人の稽古場は、いつも熱気に包まれた。
昼間は事務機器販社のメンテナンスサービス、タイムカードを押すと稽古場へ直行というライフスタイルが、楽しくて仕方なかった。どうしたら、いい芝居にすることができるか、そのことばかりをいつも考えた。僕の生活の中から、いつの間にか「夫」と「父親」という役割が、消えかかっていた。それでも妻は、何も言わなかった。
公演は、稽古場である10khzの3階で行なわれた。十数坪程の狭い会場に、100人近くの観客が押し寄せ、ぎゅうぎゅう詰めの中、体育座りで幕開きを待っていた。開演前から熱気にあふれた。僕が東京で観て来た小劇場やテント芝居の空気がそこにはあった。
スライドを使った原爆投下の映像、伊藤先生振付によるPOPなダンス、シュールなセリフに、ナンセンスギャグ。そして、人類滅亡の物語というショッキングなストーリーに、観客は爆笑し、悲鳴をあげ、物語に酔いしれた。会場から帰る観客の表情は、皆満足そうに見えた。
2日間3ステージの第2回公演「銀色の箱」は、いずれも大盛況のうちに幕を降ろした。応援してくれたヘアメイクの須藤先生やスタッフの人たち、そして10khzの半田社長も、喜んでくれた。みんなで打上げの美酒に酔いしれた。
公演には、職場の先輩も足を運んでくれた。僕は芝居を理由に、遅刻や欠勤はもちろん、仕事の手を抜くことは嫌だった。ただ、営業をやらないか、と言われても、それだけは固辞していた。販売ノルマのストレスだけは、抱えたくなかった。けれど、サービスマンの立場からの販売提案は、お客様にとって受け入れやすかったらしく、提案した商品はよく売れた。
公演が終わると、また僕は劇作モードに入った。日頃から書きとめておいたアイデアとなる星屑のようなキーワードを結び付け、物語の素を根気よくこねはじめる。このとき影響を受けた作品は、唐十郎の「ジャガーの目」だった。また、科学雑誌では、「ヒトゲノム、遺伝子の解析計画」についての記事が気になった。人の設計図が解明されたとき、人はその知恵をどう使うのだろうかと考えた。ジャガーの目は、他人に移植された恋人の眼球を追い求める女性が描かれていた。
僕は、ヒトゲノムの研究者の夢と挫折を、人格移植をテーマに描こうと考えた。作品名は「夢の責任」。導入のイメージは、飴屋法水のMMMの舞台から。逃走シーンは、劇団ショーマの舞台から、それぞれインスパイアされた。この作品は、いける。稽古前から、そう確信できた。
やがて、団員不足に悩まされたことが嘘のように、個性的な劇団員が集まってきた。ワハハ本舗のオホホ商会をやめて帰郷してきたという田沼君。足利工業大学から、滝本さんと倉田君。かおりちゃんも正規に復帰してきた。応援メンバーも集まってきた。みなぎるパワーを感じながら、第3回公演へと向かった。
旗揚げで照明を手伝ってくれた劇団一家団乱を主宰する星野君と、妹の香代子だった。香代子は夢の遊眠社のオフを利用し、稽古日のたびに東京から通ってくれた。演出は、前回役者で参加した高校教諭のHさんにお願いした。
家族が病気のかおりちゃんも、衣装係を買ってでてくれた。
芯から芝居好きの役者4人による、濃密な稽古バトルが始まった。台本の行間を、香代子がアドリブの演技で埋めた。香代子に負けじと星野君が追った。僕は選曲や装置を考案しながら、主役をはった。渡瀬も必死でついてきた。
たった5人の稽古場は、いつも熱気に包まれた。
昼間は事務機器販社のメンテナンスサービス、タイムカードを押すと稽古場へ直行というライフスタイルが、楽しくて仕方なかった。どうしたら、いい芝居にすることができるか、そのことばかりをいつも考えた。僕の生活の中から、いつの間にか「夫」と「父親」という役割が、消えかかっていた。それでも妻は、何も言わなかった。
公演は、稽古場である10khzの3階で行なわれた。十数坪程の狭い会場に、100人近くの観客が押し寄せ、ぎゅうぎゅう詰めの中、体育座りで幕開きを待っていた。開演前から熱気にあふれた。僕が東京で観て来た小劇場やテント芝居の空気がそこにはあった。
スライドを使った原爆投下の映像、伊藤先生振付によるPOPなダンス、シュールなセリフに、ナンセンスギャグ。そして、人類滅亡の物語というショッキングなストーリーに、観客は爆笑し、悲鳴をあげ、物語に酔いしれた。会場から帰る観客の表情は、皆満足そうに見えた。
2日間3ステージの第2回公演「銀色の箱」は、いずれも大盛況のうちに幕を降ろした。応援してくれたヘアメイクの須藤先生やスタッフの人たち、そして10khzの半田社長も、喜んでくれた。みんなで打上げの美酒に酔いしれた。
公演には、職場の先輩も足を運んでくれた。僕は芝居を理由に、遅刻や欠勤はもちろん、仕事の手を抜くことは嫌だった。ただ、営業をやらないか、と言われても、それだけは固辞していた。販売ノルマのストレスだけは、抱えたくなかった。けれど、サービスマンの立場からの販売提案は、お客様にとって受け入れやすかったらしく、提案した商品はよく売れた。
公演が終わると、また僕は劇作モードに入った。日頃から書きとめておいたアイデアとなる星屑のようなキーワードを結び付け、物語の素を根気よくこねはじめる。このとき影響を受けた作品は、唐十郎の「ジャガーの目」だった。また、科学雑誌では、「ヒトゲノム、遺伝子の解析計画」についての記事が気になった。人の設計図が解明されたとき、人はその知恵をどう使うのだろうかと考えた。ジャガーの目は、他人に移植された恋人の眼球を追い求める女性が描かれていた。
僕は、ヒトゲノムの研究者の夢と挫折を、人格移植をテーマに描こうと考えた。作品名は「夢の責任」。導入のイメージは、飴屋法水のMMMの舞台から。逃走シーンは、劇団ショーマの舞台から、それぞれインスパイアされた。この作品は、いける。稽古前から、そう確信できた。
やがて、団員不足に悩まされたことが嘘のように、個性的な劇団員が集まってきた。ワハハ本舗のオホホ商会をやめて帰郷してきたという田沼君。足利工業大学から、滝本さんと倉田君。かおりちゃんも正規に復帰してきた。応援メンバーも集まってきた。みなぎるパワーを感じながら、第3回公演へと向かった。
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